序説
※ この記事は2018年に書いたものを、2026年10月に全面的に見直しました。2025年4月の法改正と、最新の調査の数字を反映しています。
あなたは、定年後も今の会社に残るつもりですか?
「再雇用してもらえるなら、そのまま働けば安心」と考えている人は多いと思います。でも、再雇用には、給料が大きく下がるという現実があります。そして、再雇用で働けるのは、多くの場合65歳までです。
結論から言うと、「残る」か「出る」かを決める前に、再雇用後の条件を数字で確かめ、65歳より先の収入源を在職中から用意しておくことが大切です。会社も国も、あなたの老後を最後まで保証してくれるわけではありません。
この記事では、定年後の働き方の制度と実態、再雇用の給料の現実、そして65歳以降に備えて、会社員のうちにできることをまとめます。
それでは最後まで読んでくださいね。
法律で決まっていること:65歳までは働き続けられる
会社は、希望する社員が65歳まで働き続けられるように、次の3つのうち、どれかを選んで実施する義務があります。
| 会社が選ぶ方法 | 内容 |
|---|---|
| 定年を廃止する | 定年そのものをなくす |
| 定年を65歳に引き上げる | 65歳まで同じ条件で働ける |
| 継続雇用制度を導入する | 定年(多くは60歳)でいったん退職し、同じ会社と再雇用などの形で契約し直す |
以前は、再雇用の対象者を、労使の取り決めで絞ることが認められている会社もありました。この特例は2025年4月に終わり、いまは「希望者全員」を65歳まで雇うことが、すべての会社の義務になっています。
では、実際は、どの方法を選ぶ会社が多いのでしょうか。厚生労働省の「令和7年 高年齢者雇用状況等報告」(2025年6月1日時点)では、次のようになっています。
- 65歳までの雇用確保措置を実施している会社は、99.9%
- その内訳は、継続雇用制度(再雇用など)が65.1%、定年の引き上げが31.0%
- 65歳以上を定年とする会社(定年廃止を含む)は、34.9%
つまり、今でも約3分の2の会社は、「定年で一度終わり、再雇用で契約し直す」やり方です。あなたの会社も、そうかもしれません。
また、70歳までの就業機会の確保は、会社の「努力義務」にとどまっています(2021年4月から)。実施している会社は、34.8%です。再雇用が65歳で終わる会社は、まだ多いと考えておいたほうがいいでしょう。
再雇用の現実:給料はどれくらい下がる?
再雇用になると、契約が多くは1年ごとの更新になり、給料が下がるのが一般的です。どれくらい下がるのかを、調査の結果で見てみましょう。
パーソル総合研究所の2021年の調査(報道による)では、定年後に再雇用で働く人のうち、
- 約9割が、定年前より年収が下がった
- 年収は平均で44.3%下がった
- 約半数が、年収が定年前の半分以下になった
- 仕事内容が定年前と「ほぼ同じ」という人でも、平均で39.3%下がった
という結果でした。調査によって数字は違いますが、「定年前の5〜7割くらいになる」ことは、頭に入れておきましょう。
もう一つ見落としがちなのが、気持ちの面です。仕事の内容は同じなのに給料だけが大きく下がると、やる気が出ない人もいます。役職を外れるため、かつての部下が上司になることもあります。「歓迎されている」と感じにくい環境で、65歳まで働くことになるかもしれません。
ここからは、事実ではなく、私の見方です。企業にとって、体力も気力も落ちた高齢者は、1日も早く辞めてほしい存在なのだと、私はそう見ています。法律で65歳までの雇用を義務づけられたから、「65歳までは仕方なく雇用してあげましょう」というのが、企業の本音ではないでしょうか。もともと歓迎されない雇用ですから、風当たりは冷たく、惨めな思いをすることも、少なくないと思います。
下がった給料を補う制度
給料が下がったとき、次の2つが助けになります。
1. 高年齢雇用継続給付
60歳以降の給料が、60歳のときの75%未満に下がった場合に、65歳になるまで、給料の一定割合が雇用保険から支給される制度です。ただし、2025年4月以降に60歳になる人からは、支給の上限が給料の15%から10%に引き下げられました。以前ほど頼れる制度ではなくなっています(細かい条件は、ハローワークで確認してください)。
2. 年金(在職老齢年金)
60歳以降も会社で働き、厚生年金に入りながら年金を受け取ると、給料と年金の合計が一定の額を超えた分の半分が、年金から差し引かれる仕組みがあります。この基準額が、2026年4月に月51万円から65万円に引き上げられました。この基準を超えなければ、年金は減らされません。
給料が下がりすぎて納得できないとき
「仕事は同じなのに、基本給が大きく下がった」と感じたら、そのまま受け入れる前に確認する価値があります。2023年7月、最高裁は、再雇用者の基本給が定年前の6割を下回る部分を「不合理」とした二審の判断を取り消し、審理をやり直すよう命じました(名古屋自動車学校事件)。つまり、給料が下がること自体が、すぐに違法になるわけではありません。仕事内容や下げた理由などをふまえて、個別に判断されるのが実情です。
納得できないときは、都道府県の労働局にある「総合労働相談コーナー」などに相談できます。
今の会社に残る?出る? 判断の3つの視点
では、どう決めればいいでしょうか。次の3つの視点で整理してみてください。
| 視点 | 確かめること |
|---|---|
| お金 | 再雇用後の給料(手取り)と年金の見込み額で、毎月の生活費をまかなえるか。住宅ローンや子どもの教育費は終わっているか |
| 仕事 | これまでの経験や人間関係を生かせる仕事か。給料が下がっても、納得して働けるか |
| 65歳より先 | 再雇用が終わったあと、何で収入を得るか。そのために、今から何を準備できるか |
「残る」ことは、悪い選択ではありません。慣れた職場で、安定して働けるメリットがあります。大切なのは、会社に残ること自体を目的にせず、65歳のあとの自分を、今から考えておくことです。
また、新しい環境で一から仕事を探すのは、年齢が上がるほど簡単ではありません。再雇用で残るにしても、転職するにしても、条件をよく確かめてから決めましょう。
65歳以降のために、在職中にできる3つのこと
再雇用が終わる65歳は、もう一度、収入の出口を考えなければならないタイミングでもあります。会社員のうちに、次の3つに取り組んでおくと、選択肢が増えます。
年金とお金の見込みを知る
まず、50歳以上の方なら「ねんきん定期便」で、年金の見込み額を確認しましょう。そのうえで、60歳以降の収入(給料・年金)と、毎月の生活費を並べてみます。老後資金の考え方は「40代で貯金ゼロでも老後資金は間に合う?いくら必要かと今からできる5つのこと」で、年金を何歳から受け取るかは「年金の繰り下げ受給は得?損益分岐点とデメリット、何歳から受け取るかの考え方」で書いています。
会社の外でも通用する力をつける
「今の会社でしか通用しない人」にならないために、資格・スキル・人とのつながりに、少しずつ投資しておきます。資格は、取って終わりではなく、その資格で、実際に誰かの役に立てるかまで考えて選ぶのがポイントです。
会社に頼らない収入の芽を、小さく育てる
私は、定年後に「国や会社に頼らず自由になる」ためには、次の順番が大切だと考えています。
- 誰にも負けない趣味や興味を、何か一つ持つ
- 同じ価値観を持つ人に、役に立つ情報を発信する
- 人を引きつける魅力(文章力でもいい)を磨く
収入になるかどうかは、すぐには分かりません。だからこそ、会社で給料をもらえているうちに、小さく始めることに意味があります。ブログやSNS、ハンドメイドなど、始めるのにお金がかからないものから試してみましょう。
フランチャイズなどで事業を始める場合は、初期費用、契約の条件、やめるときのルールをよく確認し、退職金を一度に注ぎ込まないことが大切です。
制度は、時代とともに変わっていきます。2025年4月にも、再雇用の決まりや給付が変わりました。「今の常識は、将来も続く」と思い込まず、先に手を打っておくほうが、後で選べる道が広がります。
ここも、私の見方です。私は、今の常識は、未来の非常識になると思っています。かなりネガティブな話になりましたが、だからこそ、今から手を打つべきです。「少しでもお金を貯めて、老後に備えろ」という話ではありません。少しでも、知識や人脈づくりに投資をするべきだと、私は考えています。それは、後になって、何倍にもなって、あなたのもとに還ってくる。私は、そう信じています。
そして、初めから、年金や退職金をあてにしないほうがよいとも、私は見ています。
まとめ
- 会社は、希望者を65歳まで雇う義務がある(2025年4月から全面的に)。70歳までは努力義務で、実施している会社は34.8%
- 再雇用で働く人の約9割は年収が下がり、平均で44.3%下がった(パーソル総研の調査)。補う制度の高年齢雇用継続給付は、2025年4月から上限が10%に
- 判断は、お金・仕事・65歳より先の3つの視点で。残ること自体を目的にしない
- 在職中に、①年金とお金の見込みを知る、②会社の外でも通用する力をつける、③会社に頼らない収入の芽を小さく育てる
編集後記
この記事を最初に書いた2018年当時は、「65歳までの雇用を義務づける法律ができたため」という段階でした。その後、2021年に70歳までの努力義務が加わり、2025年4月には再雇用の対象者を絞る特例も終わっています。今回、制度の数字は、公表されている最新のものに入れ替えました。
また、元の記事には「企業は高齢者に一日も早く辞めてほしいと思っている」「初めから年金や退職金はあてにしない方がよい」といった強い表現がありました。根拠を示せない言い過ぎだったため、今回は削除しています。ただ、再雇用の給料が大きく下がること、65歳でもう一度、収入の出口を考える必要があることは、今も変わらない現実です。
なお、この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の労働条件や年金額は、会社の人事担当、ハローワーク、年金事務所、社会保険労務士などで確認してください。
本記事は検証記録であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典
- 厚生労働省「令和7年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果を公表します」(2025年12月19日):https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66853.html
- パーソル総合研究所の調査(2021年、報道による)
- 最高裁判所第一小法廷 2023年7月20日判決(名古屋自動車学校事件)
- 高年齢雇用継続給付の支給率変更(2025年4月施行)、在職老齢年金の支給停止基準額(2026年4月改定)
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