信用取引のリスクを具体例で解説|追証・維持率の計算、逆日歩、踏み上げとは

投資

序説

※ この記事は2019年に書いたものを、2026年10月に全面的に見直しました。

「信用取引にはリスクがある」と、よく言われます。でも、そのリスクが実際にどんな場面で、いくらくらいの損として現れるのかまで、具体的にイメージできている人は意外と少ないのではないでしょうか。

結論から言うと、信用取引の主なリスクは、①追証と強制決済、②預けたお金以上の損失、③逆日歩、④踏み上げ、⑤金利と返済期限の5つです。どれも、数字で一度計算してみると、怖さの正体がはっきりします。

この記事では、それぞれのリスクを具体的な数字の例で解説します。信用取引の仕組みや「やめとけ」と言われる理由、大損しないための対策は「信用取引は怖い?やめとけと言われる理由と大損しないためのリスク管理」にまとめているので、あわせて読んでみてください。

それでは最後まで読んでくださいね。

 

前提:信用取引のしくみをおさらい

  • 証券会社に保証金(現金や株)を預け、それを担保にお金や株を借りて売買する
  • 取引できるのは、保証金の約3.3倍まで
  • 「買い」から入る信用買いと、「売り」から入る信用売り(空売り)がある

ここからは、保証金100万円で、300万円分の株を信用買いした場合を例に考えます。

 

リスク1:追証(おいしょう)と強制決済

 

維持率とは

信用取引では、預けた保証金が、取引している金額(建玉)に対して一定の割合以上あるかどうかが、常にチェックされています。この割合を「維持率」といいます。

維持率 =(保証金 − 評価損)÷ 建玉の金額 × 100

取引を始めた時点では、評価損はゼロなので、維持率は 100万円 ÷ 300万円 = 約33% です。

 

株価が下がると、維持率も下がる

株価が下がると、評価損の分だけ保証金が目減りしたとみなされ、維持率が下がります。

株価の下落 評価損 維持率
5%下落 15万円 約28%
10%下落 30万円 約23%
15%下落 45万円 約18%
20%下落 60万円 約13%

多くの証券会社では、維持率が20%前後を下回ると「追証(追加の保証金)」を求められます。この例では、株価が15%下がっただけで追証がかかります。

15%下落の場合、維持率を20%に戻すには、300万円 × 20% = 60万円の保証金が必要です。今は55万円(100万円 − 45万円)しかないので、5万円の入金が必要になります(必要な金額の計算方法は証券会社によって違います)。

 

追証を入れられないと「強制決済」

追証は、多くの場合、数営業日以内に入金しなければなりません。入金できなければ、持っている株は証券会社によって強制的に決済されます。

強制決済は、株価が下がって追証がかかった後、つまり一番損をしている状態で行われることがほとんどです。「もう少し待てば戻るかもしれない」という選択肢は、なくなってしまいます。

 

リスク2:預けたお金以上の損失が出る

さらに株価が下がるとどうなるでしょう。

300万円分の株が、悪いニュースで一気に40%下がったとします。評価損は120万円。保証金100万円をすべて失っても、まだ20万円足りません。

この足りない分(不足金)は、借金として証券会社に支払わなければなりません。普通の株の売買なら、最悪でも「買ったお金がゼロになる」までですが、信用取引では預けたお金以上の損失が出ることがあるのです。

特に、夜の間や週末に悪いニュースが出て、翌朝ストップ安になったような場合は、損切りの注文を入れていても売れず、一気に損失が膨らむことがあります(「ストップ高とは?値幅制限の一覧と、買えない理由・翌日の注意点を初心者向けに解説」)。

 

リスク3:逆日歩(ぎゃくひぶ)

ここからは、信用売り(空売り)のリスクです。

取引所のルールで行う信用取引(制度信用)で空売りをすると、証券会社は株を借りてきて貸し出します。ところが、空売りしたい人が多すぎて株が足りなくなると、株を調達するための追加の費用がかかります。これが「逆日歩」です。

逆日歩は、1株あたり1日いくらという形で決まり、空売りしている人が払います。

  • 例:1株あたり5円の逆日歩が付き、売り建てている株数が1,000なら、その日だけで5,000円
  • 土日や祝日をはさむと、休みの日数分もまとめてかかることがある
  • 株が極端に不足すると、上限いっぱいの逆日歩(いわゆる「満額」)が付くこともある

逆日歩の金額は、その日の取引が終わってからでないと分かりません。空売りで株を持ち越すと、予想できない費用がかかることがあるのです。

 

リスク4:踏み上げ

空売りが多く積み上がっている銘柄で、何かのきっかけで株価が上がり始めると、どうなるでしょう。

  1. 空売りしている人の損失が膨らむ
  2. 損切りや追証のために、買い戻し(=買い注文)が出る
  3. その買い戻しで、株価がさらに上がる
  4. さらに別の人の買い戻しを呼ぶ…

このように、空売りの買い戻しが連鎖して株価が急上昇することを「踏み上げ」といいます。逆日歩が付いている銘柄では、そのコストに耐えきれない買い戻しも加わり、踏み上げが起こりやすくなります。

空売りは、株価が上がるほど損失が増え、理屈の上では損失に上限がありません。踏み上げに巻き込まれると、短い期間で大きな損失を出すことがあります。

 

リスク5:金利と返済期限

 

持っているだけでかかる費用

信用買いには金利、信用売りには貸株料がかかります。例えば、300万円分を年2.8%の金利で信用買いしていると、

  • 1年で約8万4,000円
  • 1か月で約7,000円

が、株価に関係なくかかります。長く持つほど、利益を少しずつ削っていきます。

 

返済期限がある

制度信用では、6か月以内に決済しなければなりません。期限が来たら、損をしていても決済されます。

 

「信用買い」が多い銘柄は、将来の売りが控えている

信用買いをした人は、いつか必ず売って返済します。つまり、信用買いが大量に積み上がっている銘柄には、将来の売り注文が控えていることになります。株価が上がりかけても、返済の売りに押されて伸び悩むことがあるのです。

 

5つのリスクのまとめ

リスク 主に関係するのは どんな損になるか
追証と強制決済 信用買い・信用売り 入金を迫られ、払えなければ一番悪いタイミングで決済される
預けたお金以上の損失 信用買い・信用売り 不足分が借金として残る
逆日歩 信用売り 予想できない費用が日数分かかる
踏み上げ 信用売り 買い戻しの連鎖で急騰し、損失が急拡大
金利と返済期限 信用買い・信用売り 持っているだけで費用がかかり、期限で決済される

これらのリスクを小さくするには、めいっぱいの金額で取引しない、損切りを予約しておく、長く持たない、ことが基本です。具体的な対策は「信用取引は怖い?やめとけと言われる理由と大損しないためのリスク管理」で解説しています。

 

編集後記

この記事を最初に書いた2019年には、タイトルに「初心者でもデイトレードで3000万円を稼ぐ!」と掲げ、特定の証券会社のおすすめや、「株のソフトを使って勝率8割、3年で3,000万円の資産を築ける」といった内容を書いていました。しかし、その実績を自分で確かめて示すことはできず、表現も大げさでした。今回の見直しで、信用取引の「リスク」に絞った内容に書き直し、それらの記述はすべて削除しました。

私が今検証している自動売買も、売りから入る取引を含みます。だからこそ、その日のうちに必ず決済し、持ち越さないことをルールにしています。どんな仕組みかは「自動売買の概要」にまとめています。

 

本記事は検証記録であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

 

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